本部向けノウハウ

代理店本部が行うべきPDCAとは?

「代理店本部が行うべきPDCAとは?」
 日本代理店協会顧問税理士 野村知栄(野村会計事務所)

前回のコラムでは「代理店の売上を増やすためには計数管理が必要」ということをお話しました。今回は管理をする前に知っておいていただきたい基本=PDCAについてお伝えしてまいります。

代理店管理(計数管理)において特に重要なことは、市場環境変化に対して柔軟に対応できる仕組み作りです。その仕組み作りとはPDCAサイクルを早く回せる体制を築くことを意味します。
PDCAサイクルとは、Plan、Do、Check、Actionの頭文字を取ったもので、計画(Plan)の実行状況(Do)を定期的にチェック(Check)し、計画どおりの結果が出ていない場合には、計画を修正して対応策を講じる(Action)ことです。
計画は、一定の推論に基づいて「こうすれば、こういう結果が出るはずだ」という仮説に過ぎないため、実際にうまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあります。計画において重要なことは、その仮説が正しかったかどうかを早めに確認し、必要であれば早めに修正を加えることです。

ところが、代理店本部の多くはPDCAサイクルを回しているつもりであっても、PDPDになってしまっています。PDPDとはPlan、Doの後、またPlan、Doを行い、これがPDPDと続いている状況です。つまり、計画がうまくいかなかった場合、もう一度計画に立ち戻って、どの推論や前提が間違っていたのかをチェックして計画を修正するのではなく、まったく新しい計画を打ち出し続けてしまうことです。
例えば、代理店開拓の戦略として、これまでターゲットとしてこなかった「A業界の代理店開拓」という計画を立て、実行した結果、成果が出なかったとします。この対応策として、今度は「B業界の代理店開拓」という新しい計画を打ち出します。これがPDPDとなってしまっているケースです。元々の計画を修正して、試行錯誤を繰り返すのではなく、別の計画に変えてしまっています。これでは、A業界はうまくいかなかったという本ケースの場合、アプローチが悪かったのか、提案内容(代理店条件)が悪かったのかチェックを行っていません。チェックとアクションを繰り返して試行錯誤を繰り返すことなく別の計画を打ち出してしまっているため、計画の精度を上げるためのPDCAサイクルを回すことができていません。

貴社ではこのようにPDPDになってしまってはいませんでしょうか?実はほとんどの代理店本部は表面的にはPDCAを回しているためこの問題に気付いていません。「A業界の代理店開拓」という計画をチェックし「B業界の代理店開拓」というアクションを打ち出しているため、一見PDCAサイクルのように見えます。ただ実際はCheckしているレベルが浅いため、PDPDになってしまっているのです。重要なことは、PDCAサイクルがぐるぐる回ることによって、当初の計画が徐々によくなってきているかどうかです。

では、どのようにしてPDCAを回すのかについてご説明します。PDCAを回す手法として「チャンピオン/チャレンジャー戦略」という考え方があります。「チャンピオン戦略」とは現在の戦略を指します。「チャレンジャー戦略」とはこれから試す新しい戦略のことを指します。現在うまくいっている戦略もいつかは陳腐化するため、新しい「チャレンジャー戦略」として試しに実施をし、もしその「チャレンジャー戦略」がうまくいけば、これを「チャンピオン戦略」として昇格させるという手法です。(A/Bスプリットテストともいいます)

例えば、先ほどの「A業界の代理店開拓」の例でいえば、ある一方のターゲット(代理店候補)にはXという特長をアピールし、一方のターゲットにはYという特長をアピールするという手法です。Xという特長をアピールした方がアポイントが取れたならば、Xをチャンピオンとし、次にZという新しいチャレンジャー(アピールするポイントを変えたアプローチ)を登場させます。同じように契約後の初期研修や、セールスツール、代理店のフォローアップの方法にいたるまであらゆる場面で「チャンピオン/チャレンジャー戦略」が活用できます。このようにPDCAをぐるぐる回し、仮説の検証を繰り返すことによって、最終的には最適な戦略を見つけ出すことができるわけです。

重要なのは、計画当初の戦略は、あくまでその時点での推論にすぎず、経営環境も計画当初とは変化をしていくため、チェックとアクションを繰り返して修正を続けない限り、効果的な戦略にはならないという点です。
ダーウィンの種の起源に、「最も強いものが生き残れるわけでもなく、最も賢いものが生き残れるわけでもない。唯一生き残れるのは変化に対応できるものである」という有名な言葉があります。経営環境の変化の激しい現在の経済下では、PDCAサイクルを本当の意味で回し、変化に対応できることが生き残りの条件となります。またサイクルの回る早さも重要で、年に1回しかPDCAサイクルが回らない企業と、年に12回のスピードでサイクルが回る企業では、自ずと戦略の品質に雲泥の差が出てきます。

>>次回は代理店の動機付け=ストーリーづくりについてお話いたします

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