01 はじめに
代理店契約は「独立した事業者同士の取引」である一方、実態によっては下請法の適用対象となるケースがあります。
特に、代理店に対して不当なコスト負担や返品、報酬の一方的減額などを行うと、「下請法違反」として行政指導や公表の対象となることがあります。
本記事では、代理店本部および代理店双方が注意すべき「下請法の基本」と「違反になりやすいポイント」を解説します。
02 下請法とは?
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者(発注側)が下請事業者(受注側)に対して不当な取引行為を行うことを禁止する法律です。
対象となるのは、主に以下のような取引関係です。
- 親事業者の資本金が下請より大きい場合
- 委託内容が「製造・修理・情報成果物作成・役務提供」などに該当する場合
代理店契約でも、本部が実質的に業務を指示・管理している場合は「役務提供型下請」にあたる可能性があります。
03 違反になりやすい代理店契約の具体例
以下のような契約・運用は、下請法違反に該当するリスクがあります。
販売マージンや報酬を一方的に減額する
→「下請代金の減額の禁止」に抵触
販売促進費や展示会費用を一方的に負担させる
→「購入・利用強制の禁止」
契約終了後に在庫商品の返品を強要する
→「不当返品の禁止」
支払いを長期間遅延させる、あるいは一方的に相殺する
→「代金支払遅延の禁止」
実質的に指揮命令下で販売活動をさせているのに、雇用契約ではない形にしている
→労働法や下請法の両面で問題化する可能性
04 本部が注意すべきチェックポイント
- 代理店が独立した経営判断で活動しているか?
マニュアルや指示が過剰な場合、下請関係とみなされることがあります。 - 報酬やマージンの算定基準を明文化しているか?
一方的な変更はトラブルの元です。 - 広告・研修・設備などの費用を強制していないか?
自主的な選択かどうかを契約書で明確にする必要があります。 - 契約解除条項に合理性があるか?
「本部の都合でいつでも解除可能」といった条文は不当と判断される恐れがあります。
05 代理店が注意すべきチェックポイント
- 契約書に下請法や独占禁止法の観点で不当な条項がないか
- 口頭指示やメール指示で「やらされている状態」になっていないか
- 支払い条件や返品条件が明確か
- 仕入れ価格・マージンの根拠を確認しているか
※下請法違反が疑われる場合は、公正取引委員会や中小企業庁の「下請かけこみ寺」への相談も有効です。
06 協会からの提言
代理店制度は、主従関係ではなく、対等なパートナーとして、信頼関係の元に成り立つものです。
「下請法」という名称からは、代理店本部、代理店、双方に関係がないように思われがちですが、本記事の内容を参考に双方でチェックし合っていただくと良いでしょう。
不明な点があれば当協会にもお気軽にご相談ください。
■ 関連リンク(参考)
※個別の事案については必ず弁護士等の専門家にご相談ください(リンク先は参照元であり当協会と直接関係はありません)