01 はじめに
インターネット広告やSNSを活用した販促活動が一般化する中で、「景品表示法(景表法)」の違反リスクが高まっています。
代理店ビジネスにおいても、本部が作成した広告素材や代理店が独自に発信したPR内容が、知らず知らずのうちに景表法違反と見なされるケースが増えています。
本記事では、実際に問題となった違反事例とともに、代理店本部・代理店それぞれの立場で行うべきリスク回避策を解説します。
02 景表法とは?
景表法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者を誤認させる広告・表示を禁止する法律です。
目的は「公正な競争と消費者の正しい選択を守ること」。
主に以下の2つの観点で規制されます。
① 不当表示の禁止
優良誤認表示:実際よりも商品・サービスの品質・性能が優れているように見せる表示
有利誤認表示:価格・取引条件などが実際よりも有利に見せる表示
② 景品類の制限
懸賞やキャンペーンの賞品などが、消費者の合理的な選択を妨げないよう上限を設けています。
03 景表法違反の代表的な事例
事例①:「通常価格」を実際より高く見せた“二重価格表示”
ある通販事業者が「通常価格9,800円のところ、今なら4,900円!」と宣伝していたが、実際には「9,800円」で販売した履歴がほとんどなく、常に4,900円で販売していた。
消費者庁は「実際には存在しない通常価格を表示して有利誤認を生じさせた」として、措置命令を下した。
[違反のポイント]
- 「通常価格」「定価」「希望小売価格」などの表現を使う場合、その価格で販売した実績が直近2週間~1か月程度あることが必要。
- 過去に一度でも販売したからといって「通常価格」と表示するのはNG。
- ECサイトやチラシなどで「今だけ割引」と書くときは、期間や根拠を明記することが大切。
[代理店ビジネスでの注意点]
- 本部が価格設定を一括管理している場合、各代理店ページの表示も同期させること。
- 代理店が独自キャンペーンを行う場合、「本部公式価格との整合性」が取れているか確認を。
- 「在庫限り」「期間限定」などの文言も、実際の販売状況を裏付けできるよう記録を残す。
事例②:「医薬品効果」をうたう美容商品広告
美容クリームの広告に「塗るだけでシワが消える」「シミが完全に薄くなる」などと記載。
実際には医薬品としての効能が確認されていないにも関わらず、医薬的効果を誇張していたとして、景表法違反(優良誤認表示)で措置命令。
[違反のポイント]
- 「治る」「消える」「再生する」「必ず」などの言葉は医薬的効能を想起させるため、根拠資料がない限りNG。
- 「個人の感想」として掲載しても、全体の印象が効果を保証するように見える場合は違反とみなされる。
[代理店ビジネスでの注意点]
- 化粧品・健康食品などを扱う代理店は、訴求できる「範囲」を本部から明示してもらう。
- SNSで「使って2週間で肌が変わった!」など個人投稿をする場合も、販売目的であれば広告扱いとなる。
- 「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の区分を理解して、表現を切り分ける。
事例③:「日本一」「業界最安」など根拠のない比較表現
ある通信サービス会社が「業界最安」「利用者数No.1」と広告。
しかし、公的な調査や客観的データが存在せず、根拠資料を求められても提出できなかったため、景表法違反として行政指導を受けた。
[違反のポイント]
- 「No.1」「最安」「トップ」「業界初」などの比較優位表現を使う場合、第三者機関のデータや調査レポートが必要。
- 「自社調べ」と記載しても、調査方法が不明確なら不当表示とみなされる可能性あり。
- 比較する対象範囲(例:国内主要10社など)を明示することが求められる。
[代理店ビジネスでの注意点]
- 本部が提供した資料を引用する際は、「調査年月」「調査機関名」などの明記を徹底する。
- 代理店が自分で作成するチラシやSNS投稿に「業界最安」「No.1」と書くのは厳禁。
- 本部が過去に取得したデータでも、古いもの(1年以上前)は「現時点では根拠なし」と判断されることがあるため注意。
事例④:代理店のSNS投稿で誇張表現が炎上
健康食品の代理店が、SNSで「○○を飲んで10kg痩せた」「私の人生が変わった!」と投稿。
本部は投稿を許可していなかったが、「代理店が販売目的で発信した広告」として、企業全体が景表法違反の指導を受けた。
[違反のポイント]
- 広告主(本部)が直接投稿していなくても、代理店やインフルエンサーによる宣伝は「広告」として責任を問われる。
- 「個人の体験談」「感想」でも、販売目的で発信すれば景表法の対象。
[代理店ビジネスでの注意点]
- SNS投稿ガイドラインを本部から共有し、「使ってよい文言・画像・ハッシュタグ」を明示する。
- 投稿前に「事前承認制」を導入することでトラブルを防止。
- 万一誤解を招く投稿が出た場合は、迅速に削除・訂正文を発信。
04 本部が気をつけるべきポイント
- 統一された広告ガイドラインの策定
各代理店が独自表現で広告を作らないよう、「使用可能な文言例」「禁止表現例」を明文化しましょう。 - 根拠資料の保存
「効果がある」と訴求する場合、必ずエビデンス(データ・試験結果・調査資料)を保存。
万一の行政指導時にも提出できる体制を整えることが重要です。 - 監査と教育体制の構築
代理店研修で景表法の基本を共有し、定期的に広告内容のチェックを行う仕組みを持つことが求められます。
05 代理店が気をつけるべきポイント
-
SNS投稿・口コミ発信も対象になる
「個人の感想です」と記載していても、実質的に広告目的なら景表法の適用対象になります。 -
根拠のない数字・比較表現を避ける
「No.1」「○倍」「必ず結果が出る」など、誤解を招く表現は避けること。
本部資料をそのまま使う場合も、最新情報か確認が必要です。 -
誇張せず、体験ベースの表現に留める
「私の場合は○○でした」「個人差があります」など、事実ベースで信頼される表現を心がけましょう。
06 協会からの提言
販売促進は代理店ビジネスの拡大に必要不可欠です。しかしながら、本記事でご紹介したように、景表法に抵触してしまうと事業にマイナスの影響を与え、事業そのものの存続や、経済的な損失を被りかねません。
本部としては、ガイドラインを作成したり、広告チェックの相談窓口の設置などが必要で、代理店としては、これらを整備していない本部があれば進言をして、双方のリスクを回避することが肝要です。
不明な点があれば当協会にもお気軽にご相談ください。
■ 関連リンク(参考)
※個別の事案については必ず弁護士等の専門家にご相談ください(リンク先は参照元であり当協会と直接関係はありません)