大きな案件が決まった時ほど、材料代と協力会社への支払いが先に出ていく――。今回は、商業施設や店舗向けの看板・サイン(袖看板、ファサード、内照式サイン、施工一式)の制作施工を手がける販売代理店から日本代理店協会に相談された事例をご紹介します。複数の大型リニューアル案件が同じ時期に重なり受注は好調だったものの、アルミ複合板・アクリル・LEDモジュール・鋼材といった資材の先行仕入れと、高所作業・電気工事の施工外注費の支払いが、工事代金の入金に先行し、資金繰りが急速に逼迫していました。
相談に至った背景
同社は、本部が展開する店舗改装パッケージの拡販が進み、複数の商業テナントの一斉リニューアルという大口案件が短期間に集中しました。看板・サイン工事は、着工前に資材をまとめて発注し、施工の多くを高所作業車・電気工事の協力会社へ外注するため、工事代金の入金(多くは検収後の翌月末)よりも先に支払いが発生します。案件が大型化・同時多発化するほど立替負担が積み上がる「増加運転資金」が重くのしかかり、このままでは次の見積依頼に納期を提示できない状況でした。
日本代理店協会での整理
ご相談を受け、まず資金繰り表をもとに「何に・いくら・いつ」資金が出ていくのかを可視化しました。論点を切り分けると、次のように整理できました。
- 立替期間の長さ:資材発注から入金まで平均で約60〜90日。大型案件が重なる局面では、この期間の運転資金がまとめて必要になる。
- 案件の集中:テナント一斉改装は工期がそろうため、資材仕入れと外注費の支払いも同じ時期に山型に集中する。
- 調達の緊急度:次の受注につなげるため、審査・実行までのスピードが重視される。
取った打ち手
- 必要額の根拠づけ:受注残と着工予定をもとに立替額のピークを算出し、運転資金1,100万円を必要額として設定した。
- 資料の整備:受注契約書・見積書・工程表・発注書をそろえ、赤字補填ではなく案件増加に伴う増加運転資金であることを数字で説明できる状態にした。
- 調達手段の比較:金融機関のプロパー融資・制度融資・信用保証協会付き融資を比較し、実行スピードと金利・保証料のバランスから現実的な組み合わせを検討した。
- 入金サイトの見直し:元請・テナントとの支払条件について、着手金や中間金の設定余地を確認し、立替期間そのものを短くする交渉材料を整理した。
結果
必要額の根拠と資金使途を明確にした資料をもとに金融機関へ相談したことで、増加運転資金1,100万円の調達につながり、集中した大型案件の資材仕入れと外注費の支払いを滞りなく回すことができました。着工日を待たせずに見積・受注を進められる体制が整い、繁忙のピークを取りこぼしなく乗り切ることができています。
同じ悩みを持つ代理店の方へ
受注が伸びている時こそ、入金前の立替が膨らみ資金繰りが苦しくなる「増加運転資金」の壁は、施工・制作をともなう代理店に共通して起こります。大切なのは、赤字ではなく前向きな資金需要であることを数字で示し、必要額とタイミングを根拠づけて早めに動くことです。日本代理店協会では、こうした資金繰りのご相談を数多くお受けしています。着工や仕入れのタイミングで手元資金に不安を感じたら、案件が重なる前の早い段階でご相談ください。